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木材原料の調達指針

木材原料の調達指針

紙の原料となる木材は、持続可能な森林経営を行うことにより再生産が可能な、優れた資源です。また、森林資源は適正な管理と利用によって、二酸化炭素の吸収固定による地球温暖化防止、水資源の保全、生物多様性の保全等に貢献します。森林の管理と利用においては、森林破壊や違法伐採に加担せず、これらの環境的価値の維持・向上を図るとともに、人権の尊重、森林施業における労働者や伝統的権利の保護など、社会的責任も果たしていく必要があります。
王⼦グループは、責任ある原材料調達を実践するため、「王子グループ・サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」を制定し、さらに木材原料に対し「⽊材原料の調達指針(2005年制定)」を定め、原料の木質チップ・パルプの全てのサプライヤーから、当指針に基づく責任ある調達を推進します。さらに、人権問題や森林破壊等の社会的関心が高まる中、これら社会的課題に応えるべく、2023年3月、「木材原料の調達指針」を改訂しました。
同改訂指針は、日・英2つの言語で作成し、ウェブサイトに開示することにより、世界中のサプライヤーにその内容を伝達しています。

⽊材原料の調達指針(2023年改訂)

王子グループはすべてのサプライヤーに持続可能な木材原料を生産することを求め、検証します。特に、「トレーサビリティの確保および責任ある木材原料調達の実施」においては、以下の項目を実施します。
王子グループが調達する木材原料の全てのサプライヤーを対象に、下記の項目を継続的に調査し、原料のトレーサビリティを確保するとともに、適正に管理された森林より産出された原料のみを購入することで、責任ある調達を実施します。出所や森林管理状況が不明の木材、下記項目に適合しない木材は、サプライヤーとの対話・改善要請を行い、改善されないサプライヤーからの調達は行いません。

  1. 原料の産地(伐採地域、森林所有形態、人工林・天然林の区別など)
  2. 森林の管理方法(適用される森林法や森林管理規準など)
  3. 森林認証の取得状況
  4. 違法伐採による木材がないこと(森林認証、伐採許可証、原木の入荷記録等による確認)
  5. 遺伝子組み換え材がないこと
  6. 公的に保護価値が高いと認められた山林を伐採していないこと
  7. 原料をめぐる重大な社会的紛争がないこと
  8. 人権の擁護や労働者の権利保護に配慮していること

検証には森林認証制度のFSC®またはPEFCも活用します。
輸入木質チップの調査は船積みごとに実施します。引き取り単位が小さい国産木質チップおよびパルプの調査は年1回とします。

責任ある原材料調達の実施状況

王⼦グループはFSC®認証製品も製造しており※1、FSC®認証材、管理された⽊材※2等のFSC®の要求事項に適合したチップのみを使⽤しています。適切に管理された⽊材とするためには、王子グループの⽊材原料調達指針とも重なる、FSC®が求める5つの要求事項※3を満たす必要があります。FSC®-CoC認証を保有するサプライヤーに対しては第三者による監査が⾏われるため、こうした認証制度を利⽤することで、⽊材原料のトレーサビリティやサプライヤーチェーン各段階における適切な管理を、確実にすることができます。これらの監査結果はウェブ上で確認することが可能です。

  • ※1FSC®ライセンスコード 王⼦製紙:FSC-C014119他
  • ※2FSC®管理された⽊材:FSC®認証材ではないものの、FSC®が定める5つの要求事項※3に対するリスク評価を実施した上で第三者認証機関の審査を受け適格性が確認された⽊材。この管理された⽊材は、FSC®認証製品製造時にFSC®認証材に混ぜて使⽤することが認められています。なお、管理された⽊材の認証を受けた森林事業者、管理された木材を調達する組織は、第三者認証機関による毎年の監査が義務付けられています。
  • ※35つの要求事項:以下の5つのカテゴリーに属さない、またはこのカテゴリーの木材である可能性は低いと確認された木材のこと。

王子グループは、2021年度から「環境行動目標2030」の下「古紙利用率70%以上(国内)」を目指し、さらなる古紙利用の拡大に取り組んでいます。2022年度古紙 利⽤率は約67.6%、残りは⽊質チップ由来の⾃製及び購⼊パルプ(フレッシュパルプ)が占めます。なお、王子グループの古紙消費量は年間約381万トン、国内全体の古紙消費量1,570万トンの24%に相当します。
調達部⾨では、個々のサプライヤーやサプライヤーの業界団体と連携し、古紙の品質安定と紙リサイクルの促進を図っています。

  • 古紙利用率:紙の品種や用途により、古紙とフレッシュパルプの配合率は異なる。
2022年度責任ある原材料調達の実施状況
  目標 実施状況 達成率
持続可能な森林経営 森林認証率:100% 国内:100%、海外:94% 96%
木質チップ 輸入チップ:50社
国内チップ:275社
FSCの要求事項を満たす木材由来:100%確認
全量を対象に、669件のトレーサビリティを確認
100%
購入パルプ 輸入パルプ:18社
国内パルプ:6社
FSCの要求事項を満たす木材由来:100%確認
全量を対象に、779件のトレーサビリティを確認
100%
(国内)古紙 国内:338社 古紙利用率:67.6%
登録事業者からの調達:100%確認
100%
  • FSC®の要求事項を満たす木材由来:例)FSC®管理木材

トレーサビリティの確認

王子グループは、木材原料調達指針に基づき、木材の原産地や森林管理方法、違法伐採材や保護価値の高い森林由来の木材の混入有無、人権侵害の有無などの確認項目を定め、適正に管理された森林より生産された原料のみを調達しています。さらに、原産地の森林~チップ工場~パルプ・製紙工場の全工程を通して、木材原料の出所をさかのぼることが可能です。
当社は、木材原料の全てのサプライヤーに対し、木材原料に対するコンプラインス違反を監視しており、その監査結果を開示しています。2022年度は、国内外チップ4,622千BDT(絶乾重量トン)、購入パルプ183千ADT(湿重量)の調達を行い、すべてのサプライヤー(国内外のチップサプライヤー 325社、国内外のパルプサプライヤー 24社)からトレーサビリティレポートを入手し(回収率100%)、「木材原料の調達指針に則った調達がなされていること」を、第三者機関の監査により確認しています。主要なチップ輸入国には王子グループ社員が駐在しており、船積み立会い、品質指導やサプライヤーとの業務打合せなどを行います。チップ船への船積みに際し、原料の出所、森林管理方法などを確認し、トレーサビリティレポートを作成します。特に合法性確認のため、サプライヤーに森林認証、伐採許可証、原木の入荷記録等の整備を確認します。国内チップについては国内主要個所に担当者を置いてサプライヤーとの業務打合せなどを行っています。定期的に、原料の出所、森林管理方法などを確認し、トレーサビリティレポートを作成します。
仮に、森林認証や木材原料の調達指針等の基準を満たさない事例が判明した場合、サプライヤーとの対話・改善要請を行い、改善されないサプライヤーからの調達を停止します。当該サプライヤーからの木材原料の調達を停止します。サプライヤーが満たすべき要件を認識し、認証基準と関連法令の遵守に取り組むことができるよう、関連情報の提供やベストプラクティス事例を用いた是正活動を継続的に行います。

トレーサビリティの確認
FSC<sup>®</sup>-FM 認証監査の様子(ベトナム QPFL)(FSC<sup>®</sup>C016623)
FSC®-FM認証監査の様子(ベトナム QPFL)(FSC®C016623)
トレーサビリティレポート
トレーサビリティレポート

サプライヤーのモニタリング

王子グループでは、毎年、現地サプライヤーを訪問し、伐採許可書や関係書類の確認、また実際の伐採地や山林を検証して、木材原料の調達指針の遵守状況をモニタリングし、トレーサビリティを確認しております。またこれらのモニタリングを通じて、サプライヤーと良好な関係を構築しています。

ブラジル・CENIBRA社の林業奨励プログラム

セニブラ社は、木材原料の約15%を自社林以外の小規模農家より購入しています。CENIBRAとブラジルの農民との長期的なパートナーシップにより、地域社会を林業事業に統合し、雇用と所得の創出、生活の質の向上、環境保全と田園地帯の開発に貢献することができます。また、土地の集中を緩和し、地域活動を可能にし、農民の収入を得る機会を創出し、多様化させることができます。プログラムが実施される自治体に資源をもたらし、適用される法律と労働者の権利の遵守を促進し、近隣住民やコミュニティとの関係を強化します。
2022年には、1,025件の契約を通じて、566名の農家がこのプログラムに参加しました。プログラムに登録された合計19,135haの植林地が、過去5年間に自然生態系の転換がなく、違法伐採がないなど、FSC®管理木材の基準を満たしていることを、CENIBRA社で検証しています。

現地サプライヤーへのヒアリング(ベトナム)
現地サプライヤーへのヒアリング(ベトナム)
現地サプライヤーとの山林視察(ベトナム)
現地サプライヤーとの山林視察(ベトナム)

クリーンウッド法への対応

王子グループは、2017年5月に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(通称:クリーンウッド法)※1で定める第一種、第二種登録木材関連事業者としての登録を、2018年3月に完了しました。今後、木材原料やバイオマス燃料を調達するにあたり、日本製紙連合会と連携して合法証明デューディリジェンス※2を行い、合法性の確認を行ってまいります。

  • ※1同法は、我が国又は原産国の法令に適合して伐採された木材およびその製品の流通や利用を促進することを目的として、対象となる木材等や木材関連事業者の範囲、登録方法等とともに、木材関連事業者および国が取り組むべき措置についても定めており、国際的な問題である‘木材の違法伐採’を抑制するための法律です。
  • ※2合法証明デューディリジェンスとは、以下の3つのプロセスを経て、木材の違法リスクを最小化することです。