Environment 環境

海外の植林地概況

海外の植林地概況

海外植林事業の概況

王子グループは、7ヶ国、10ヶ所で植林事業を展開しています。2024年7月時点の海外植林面積は447千haに及びます。また、生物多様性や流域保全を主目的とした環境保全林は152千haです。王子グループは、「環境」「社会」「経済」それぞれの側面から適切な森林経営を行うために、森林認証制度※1を活用しており、2023年度末の森林認証取得率は97%です。伐採期を迎えた植林木は、現地で製紙原料(木質チップ)や製材用材に加工され、パルプに加工されるとともに、チップ専用船に積まれて日本へ輸送されています。
海外植林事業は、木質原料の確保とともに、CO2の吸収・固定、雇用や産業の創出により、真に豊かで持続可能な地域社会に貢献します。

  • ※1持続可能な森林経営を目指し、森林が基準通り良好に管理されていることを、第三者機関が審査・認証すること。なお、生産林や環境保全林を含む全体の森林を対象とします。(例)FSC®、PEFC等。
王子グループの森林概況
海外植林事業の概況

気候変動対策を推進します

森林生態系において、樹木は成長過程において大気中のCO2を吸収し、幹や枝葉・根に炭素を固定します。枯死木、あるいは枯葉や枯枝がすぐに分解されて大気中にCO2として放出されるわけではなく、炭素を含んだ土壌有機物として土壌に蓄積し、少しずつ分解してCO2が放出されます。また、伐採された樹木からCO2がすぐに排出されるわけではありません。
伐採された樹木 は、木材として住宅や家具、あるいは紙として利用され、長い間にわたって炭素を保持し続けます。他方で、建築廃材や未利用材がバイオマスエネルギーとして化石燃料を代替することにより、化石燃料から排出されるCO2排出の削減につながります。
王子グループでは、植林木を増やし伐採後も再植林を行いながら森林を維持することによりCO2を吸収・固定し(森のリサイクル)や植林木から製造した紙・板紙製品を古紙として再利用(紙のリサイクル)することによってもCO2を固定し、気候変動対策を推進してまいります。

ブラジル・CENIBRA社における森林火災への取り組み

近年、大規模な森林火災が頻発し、グローバルな課題として急浮上しています。こうした中で、ブラジルで植林・パルプ製造事業を展開するCENIBRA社では、保有する25万haの森林において、人工知能(AI)を活用した革新的な防火システムを導入しています。森林内に、360度をカバーする回転式カメラを備え付けた監視塔を39基保持。AIが煙や火を検出すると、最短距離にいる消防隊員にモニター室から連絡が入り、速やかに消火活動を行う仕組みとなっています。人の目以上に優れたAI搭載カメラにより1〜2分で正確な発火位置を把握できるため、森林火災リスクの大幅低減に成功しています。

火災監視塔
火災監視塔
モニター室内における火災監視
モニター室内における火災監視
消火隊員の消火訓練
消火隊員の消火訓練

早生樹の植林によるCO2吸収の促進

王子グループの海外植林事業では、広葉樹のユーカリやアカシア、針葉樹のラジアータパインなどの早生樹を植林しています。また、ブラジルCENIBRA社では、長年にわたり林木育種を行っています。地道な人工交配によって得られた2万以上の個体から、約15種類の成長量・パルプ生産特性が高い優良品種を選抜。同様に、インドネシアKTH社などでも林木育種を継続しています。各事業で開発した優良系統を植林することで、森林の成長量を高め、CO2吸収の促進を目指しています。

CENIBRA社ユーカリ植林地
CENIBRA社ユーカリ植林地
同CENIBRA社苗畑
同CENIBRA社苗畑

より豊かな森づくりのために、樹木の品質改良

アジア農林技術センターでは東南アジアの植林プロジェクトをベースに、植林木の生産性の維持・向上を目的として、現地に即した研究技術開発を行っています。
成長が早く品質の良い品種を植林し、植林木の品質および収穫量を改善することは、植林事業の収益性向上ばかりでなく、天然林の違法伐採低減による天然林保護にもつながります。アジア農林技術センターでは国内外で培った育種技術をベースにユーカリ・アカシアなどの早成樹種の品種改良を行っています。
早く育つ植林木は多くの養分を吸収します。また重機を用いた収穫作業により土壌が硬くなり植林木の成長に悪影響を与えることが懸念されます。持続的に植林事業を運営するためには収穫により持ち出された養分を補給するとともに耕耘等により土壌理学性を改善し、土壌を健全な環境に保つことが必要です。このため土壌・植林木の養分分析や施肥・耕耘試験を行い、土壌環境保全に取り組んでいます。

ユーカリの人工交配(インドネシア)
ユーカリの人工交配(インドネシア)
アカシア植林地における土壌調査の様子(ベトナム)
アカシア植林地における土壌調査の様子(ベトナム)

CENIBRA社有林の衛星データ分析

近年、衛星データを使用して世界中の森林変化を分析したデータセットや、それらをマッピングしたプラットフォームが発展しています。これにより、広範囲かつ長期間にわたる森林モニタリングが誰でも簡単に実施できるようになりました。しかし、これらのデータには持続可能な林業経営における伐採作業を、森林破壊と誤認するという課題があり、解釈には十分な注意が必要です。
そこで、王子ホールディングスは衛星分析に精通する第三者に依頼し、王子グループ最大規模であるCENIBRA社有林を対象に、衛星データ、現地の自然植生情報、施業履歴を組み合わせて森林変化を分析しました。その結果、公開データセットで「森林損失」と表示されるCENIBRA社有林の99.9%は「森林減少」に該当しないエリアである可能性が高いことが示されました。
王子グループは、今後も持続可能な森林管理を推進し、さまざまな解析技術を活用して自然のモニタリングや情報開示に取り組んでまいります。