Environment 環境

気候変動に関連する情報開示(TCFDへの対応)

気候変動に関連する情報開示(TCFDへの対応)

TCFD

王子グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に2020年12月に賛同し、本タスクフォースが推奨する気候関連情報開示に取り組んでいます。

TCFD
  • TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures
    G20財務大臣・中央銀行総裁会合の要請を受け、金融安定理事会(FSB)によって設立されたタスクフォースです。2017年6月、投資家の適切な投資判断のために、気候関連のリスクと機会がもたらす財務的影響について情報開示を促す提言を公表しています。

ガバナンス

気候変動を含むサステナビリティへの取り組みを経営の重要課題の一つと認識し、2022年4月にサステナビリティ推進委員会およびサステナビリティ推進本部を設置しました。サステナビリティに関するコミットメントを果たす上で重要な事項について、サステナビリティ推進委員会で審議し、取締役会が監視・監督します。
サステナビリティ推進委員会は、気候変動をはじめとするサステナビリティに関する統括責任者である、王子ホールディングスの代表取締役社長(グループCEO)を委員長、取締役(全カンパニーのプレジデントと女性社外取締役を含む)を委員として年2回開催され、サステナビリティに関するリスクおよび対策について協議します。協議事項は重要性に応じてグループ経営会議に付議・報告され、グループ経営会議の審議を経て、取締役会において執行決定されます。
サステナビリティ推進本部は、グループの統括管理部門として、気候変動関連のグループ横断的なリスク・機会を特定し、グループ内への浸透を図るとともに、サステナビリティ推進本部の管掌取締役に毎月報告し、グループ経営会議に年2回付議・報告します。重要なリスク・機会は管掌取締役の判断のもと、取締役会に報告します。また、サステナビリティ推進委員会の事務局として、サステナビリティ推進委員会の決定事項を推進します。

サステナビリティ推進体制

戦略

気候関連のリスクと機会を下表のように分析し、2030年に向けた中期の炭素税等の政策・規制による移行リスク、2050年に向けた長期の降水・気象パターンの変化等の物理的リスクおよび中・長期の低炭素製品の需要増加機会について、その重要性を認識しています。
脱炭素社会への移行に対応すべく、GHG排出削減目標を定め、石炭使用量削減や森林によるCO2純吸収量の拡大、プラスチックを代替する木質由来製品の開発などに取り組んでいます。これまでの取り組みを継続することにより、脱炭素社会への移行が事業に及ぼす影響は限定的と認識していますが、今後もリスク分析を継続し、レジリエンス※1を強化していきます。

  • ※1気候関連のレジリエンス(回復力)の概念には、移行リスクや物理的リスクへの対応能力など、組織がより良く気候関連のリスクを管理し、機会を捉えられるよう気候変動に対応する適応能力を開発することが含まれる。(出典:TCFDによる提言)

リスク管理

リスク分析は、サステナビリティ推進本部が社外の専門家の協力を受けてグループ横断的に整理し、サステナビリティ推進委員会にて重要度と優先順位を協議しつつ実施しています。事業・戦略・財務に及ぼす影響は、1.5℃(2℃)と4℃のシナリオを活用して中期(2030年)と長期(2050年)で整理し、定量的または定性的に評価※2します。
戦略に基づくグループの気候関連リスク対応は、サステナビリティ推進本部が統括管理し、サステナビリティ推進委員会が進捗を管理します。特にGHG排出量の削減については、プロジェクトチームを編成し、石炭使用量の削減や森林によるCO2純吸収量の拡大に取り組んでいます。また、重要性に応じてグループ経営会議に付議・報告され、全社的なリスク管理と統合されます。

  • ※2移行リスクは、地球の平均気温上昇を2℃に抑制する可能性を示したIEA 2DSと、2050年までにネットゼロを達成するNZE2050の、2つのシナリオに基づいて分析しました。物理的リスクは、RCP1.9、RCP2.6、RCP8.5の各シナリオに基づいて分析しました。RCP8.5では地球の平均気温が4℃以上上昇し、自然災害の頻発化が予測されています。

指標と目標

パリ協定における1.5℃目標を踏まえ、以下の目標を策定しました。また、国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)のネット・ゼロ・エミッション(NZE: Net Zero Emissions)シナリオの炭素価格:140 USD/t-CO2(先進国における2030年の水準)を内部炭素価格(ICP: Internal Carbon Price)として引用し、リスク分析や投資判断の評価項目に使用しています。

2023年度実績
脱炭素に向けた投資額
気候関連リスク・機会の財務影響

気候関連のリスク・機会と戦略・対応

こちらの表は横にスクロールしてご覧いただけます。
タイプ ドライバー
(事業への影響を発生させる要因)
事業環境の認識 事業への影響 戦略と対応策
1.5℃(2℃)
シナリオ
4℃
シナリオ
2030 2050 2030 2050
移行リスク 政策・法規制 化石燃料由来のエネルギー価格変動 エネルギーミックスの変化により、化石燃料由来のエネルギーを用いた調達や電力についてコストが増加
  • 省エネを徹底し、自家発電設備運用の効率化を図り、化石燃料使用量と購入電力量を低減し、エネルギーコスト全体を最適化
  • 2050年度のネット・ゼロ・カーボンに向け、水力やバイオマスなどの再生可能エネルギー運用を強化
CO2排出規制の強化 炭素税や排出権取引の導入または強化により、エネルギー消費やクレジット運用コストが増加
市場 ステークホルダーの低炭素製品・サービスへの関心の高まり 消費者の脱炭素への意識が高まることにより、化石燃料由来のエネルギー消費製品・サービスに対する不買運動が増加
  • 再生可能エネルギー等のCO2排出が少ない燃料への転換や省エネルギー対策の強化
  • 森のリサイクルや古紙のリサイクルなど、資源循環型の環境にやさしい事業の取り組みをさらに推進
評判 ステークホルダーからのネガティブフィードバック
  • 必要以上の森林伐採が地球温暖化を促進するとのイメージから紙製品の需要が減少
  • 投資家の要求に対応できず評価減少、資金調達が厳しくなる
  • 持続可能な森林経営の取り組み状況をステークホルダーへ継続的発信
  • 森林認証取得の推進、違法伐採しない等の調達方針の公表や調達先のトレーサビリティ確保
  • 環境NGO等と協力し、環境に配慮した事業活動を伝える環境教育の実施
  • クリーンウッド法で定める第一種、第二種登録木材関連事業者としての登録
  • 木材原料やバイオマス燃料の調達に伴う合法証明デュー・ディリジェンス、合法性の確認
物理的リスク 急性 異常気象事象の激甚化 大規模な自然災害発生による拠点の被災やサプライチェーンの寸断等の事業停滞
  • BCPの策定、定期的な見直しおよびBCMの強化
  • 主要原料における状況把握・モニタリング
  • サプライヤーとの関係強化、サプライヤーの多様化による調達安定化
慢性 降水・気象パターンの変化や平均気温上昇 主原料となる樹木の生育状況悪化等に伴い調達コストが増加
  • 北米、南米、オセアニア等の分散調達による安定的調達の強化
  • 社有林の拡大および有効活用の推進
  • 気温や降雨などが樹木の生育に及ぼす影響の調査や研究、その地域に適した樹種の選定
機会 資源効率 資源有効活用
水の使用と消費の削減
洪水や干ばつ、降水量の変化や水ストレス地域でのクリーンな水需要の増加により、高度な水処理技術・用水管理の需要が増加
  • 生活用水製造用としての展開を推進する等水処理事業のさらなる拡大
  • 水資源の有効活用につながる革新的な技術の提案
エネルギー源 エネルギーの低排出源使用 脱炭素社会の実現に向け再生可能エネルギーの需要が増加
  • 風力発電や小水力発電等の電力事業の推進
製品とサービス
  • 消費者嗜好の変化
  • 研究開発とイノベーションによる新製品・サービスの開発
脱炭素、環境に対する意識が高まり、低炭素・環境配慮型製品の需要が増加
  • バイオマスを原料としたバイオマスプラスチックへの代替やプラスチック包装に代わる紙素材の開発の強化および販売機会の拡大
市場 インセンティブの使用
  • 森林利用・林業促進政策により、森林保全活動に対する支援拡大
  • 2050年以降の森林吸収に伴うカーボンクレジット売買による社有林の価値向上や森林経営/マネジメントに係る支援(ノウハウ教示)要請の拡大の可能性
  • 社有林に対し国や地方自治体の方針に沿った管理を計画・実行
  • 現地に即した研究技術開発を行うなど植林木の生産性を維持、向上
  • 影響額 小:100億円未満、中:100億円以上500億円未満、大:500億円以上 ※ 以外は定性評価