日本において紙の原料の約6割は古紙です。私たちの家庭から発生する古紙は、主に「集団回収」や「行政回収(地方自治体による資源回収)」によって回収され、製紙工場で紙に再生されます。最近では、脱プラスチックに向けた代替素材としての紙の需要が高まり、持続的な古紙リサイクルの重要性がさらに増しています。王子グループでは、全国各地の工場で古紙を配合した新聞、洋紙、板紙を生産しています。各地で回収された古紙は、近隣の工場を中心にグループ内で使用され、健全な古紙リサイクルシステムの維持に貢献しています。また古紙利用率をさらに高めるべく、さまざまな種類の古紙の活用に積極的に取り組み、国内の資源循環利用に寄与しています。
王子グループの古紙消費量は年間381万トン、国内全体の古紙消費量1,570万トンの24%に相当します。古紙消費量の内訳は、段ボール古紙が57%、雑誌古紙18%、新聞古紙16%となっています。古紙利用の拡大とともに、古紙利用率※1は年々増加を続けています。近年は、古紙利用率の高い板紙よりも洋紙生産の減少幅が大きく、紙の生産品種構成の変化が紙全体の古紙利用率を押し上げています。2021年度は67.1%でしたが、2022年度は洋紙生産減、板紙の生産増により67.6%となりました。
王子グループは、継続してさまざまな種類の古紙の資源化に取り組み、高い古紙利用率を維持しています。2021年度からは「環境行動目標2030」のもと「古紙利用率70%以上(国内)」を目指し、さらなる古紙利用の拡大に取り組んでいます。
2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
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古紙利用量(千t) | 新聞 | 1,035 | 1,040 | 956 | 902 | 793 | 676 | 636 | 624 |
雑誌 | 667 | 649 | 710 | 765 | 815 | 795 | 773 | 677 | |
段ボール | 1,979 | 2,025 | 2,077 | 2,051 | 1,996 | 1,976 | 2,056 | 2,171 | |
その他 | 349 | 352 | 351 | 362 | 406 | 378 | 369 | 333 | |
合計 | 4,029 | 4,066 | 4,093 | 4,081 | 4,010 | 3,826 | 3,834 | 3,806 | |
古紙利用率(%) | 王子グループ国内 | 64.3 | 63.5 | 64.0 | 64.0 | 65.6 | 68.5 | 67.1 | 67.6% |
日本全体※2 | 64.3 | 64.4 | 64.2 | 64.3 | 64.6 | 67.5 | 65.9 | 66.3 |
王子グループは、新聞用紙、印刷用紙、板紙など多様な製品を生産し、新聞、雑誌、段ボールをはじめとする様々な古紙を利用しています。主な古紙の種類と使用される製品の関係は図の通りです。また、従来は焼却されることの多かった機密文書や、古紙再生に適さなかったビニール貼合品、金・銀紙等が含まれた難処理古紙の再生に取り組んでいます。難処理古紙専用の溶解設備「ニーディングパルパー」により再生された古紙パルプは、段ボール原紙などに使用されています。
利用拡大が注目されている紙コップ等についても、リサイクルの仕組み作りを始めており、板紙原料としてのリサイクルを進めていきます。
古紙に混入している紙以外の異物や、特殊な印刷や加工をした紙のインクが、紙製品の色の斑点や表面の膨れの原因となり、品質トラブルを引き起こすことがあります。これらの混入物を禁忌品と総称しています。王子グ ループは、古紙問屋や(公財)古紙再生促進センターと協力し、自治体、学校、企業への禁忌品混入防止の啓蒙活動に取組んでいます。
紙製品ではあるものの製紙原料とならないもの | |
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芳香紙、臭いの付いた紙 | 洗剤・石鹸・線香など紙製包装、段ボール箱など |
昇華転写紙、感熱性発泡紙 | 感熱紙、アイロンプリント紙、立体コピー紙(点字用など) |
ろう段、ワックス付き段ボール | 輸入青果物、水産加工品などが入った段ボール紙 |
汚れた紙 | 食品残渣が付着した紙、油の付いた紙 |
紙以外のもの |
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石、ガラス、金属、土砂、木片、布類、プラスチック類など |
ニュージーランドでは日本ほど分別回収が発達しておらず、基本的には資源ごみは何でも「リサイクルビン」に入れて回収されます。このため、汚れが少なく品質の高い古紙を効率的に集めるには、古紙のみを回収する体制の構築が不可欠となります。Oji Fibre Solutions社は国内最大の古紙利用企業にして唯一の段ボール原紙生産会社という立場にあり、自前で展開する古紙回収事業では自社消費分はもちろん、国内総消費量をも上回る回収量を誇ります。
全国13ヶ所のベーリング(古紙を圧縮梱包して1トン程度のサイコロ状の塊(ベール)にすること)拠点を持ち、2022年は約24万トンを回収し、自社消費量を上回る分については、その大部分を王子グループのGSPP社(マレーシア)等の海外へ輸出しています。Oji Fibre Solutions社の取り組みが国全体の古紙リサイクル率向上に直結することから、全国的な回収システムを政府とともに検討したり、古紙配合率を増やした板紙製品を開発する等、古紙回収と利用率を向上させる活動に積極的に取り組んでいます。
GSPP社は古紙を原料とした段ボール原紙を製造しており、2021年には大幅な生産能力増強を行いました。2022年には提携する回収・選別拠点等からの約37万トンのマレーシア国内古紙に加え、ニュージーランド・日本を含む国外から古紙を輸入しています。
GSPP社は、提携する古紙回収・選別拠点を中心に、マレーシア国内の古紙の品質改善に力を入れています。
また、古紙リサイクルをいっそう促進すべく、一般市民の方々への啓蒙活動も行っています。
右下の写真は、以前に在マレーシア日本大使館と共同で福祉施設に寄贈した分別ボックスで、廃棄時に紙類・プラスチック類・衣類と分けることで、それぞれ資源として再利用する意識を高めてもらうよう設置しました。
経済成長が著しい東南アジアやインドでの段ボール原紙需要の増加など、紙・板紙製品の需給は国際経済動向により大きく変動し、原料の古紙も大きな影響を受けています。王子グループは、幅広いネットワークで動向の変化を敏感にキャッチし、古紙の安定調達に努めています。